セロリさん

春畑セロリという名前を聞いたとき、男性だと思っていました。なんとなく。

男性であれ女性であれ、こういうペンネームをつけるひとは、ちょっとトボケたところがあるに違いないと思っていました。実際のところ、そうでした。
仕事のクォリティは言うまでもなく高いので、トボケたところは、いい味をだすスパイス。とにかくオープンマインドで、ピアノ指導者の間にもファンが多いことも、すごく納得です。

そんなセロリさんですが、一度だけ「鬼セロリ」と思ったことがありました。
絵本の左ページに短い楽譜が載っています。これは、わたしの手がきです。

絵本化がほぼ決まって、セロリさんのアジト「トリゴ」で打ち合わせた際に絵の対向ページにはその絵の曲の『手がき譜』をぜひ入れたいという、確かにコラボレーションを積み重ねた末の絵本なので、楽譜があって当然なんだけど、なぜ『手がき』なの?
その日から〈手がき譜虎の穴!〉に突き落とされました。

試作品を作って作って作って、送ること数回、NG! NG! またNG!
これではたまらない、と思って、音符のタマやハタなどパーツに分けて描いたものをPCに読み込み、コツコツと並べたり、動かしたり、セロリさんのリクエストにすぐに応えられるようにしました。それでもNGは出て、
「じゅんこさん、そこのところもうちょっと余白が欲しいのよ、響きが残って余韻が感じられるスペースがないと」と言った具合に、優しい言葉遣いの中にもキッチリと要望を伝えてくる。

結局、すべての譜面ページが出来上がるまで、2ヶ月くらいかかりました。
どの部分に手こずったのか、工夫を加えたのか、敢えて説明しなければわからないと思います。なにしろ大半の人が手がきだということにも気づいていないです(楽譜を見慣れている人は別ですが)。
もちろん苦労話なんてしなくてもいいのだけれど、話したい気もします。いずれ、イベントでそういう話ができるといいなとも思います。
なぜなら、セロリさんからのダメ出しは、目から入る情報(楽譜)と音楽を表現することが密につながっていることを、教えてくれたからです。
楽譜はグラフィックな表現であることを身をもって(泣きながら)体験したのでした。セロリさん、ありがとう。

セロリさん
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